はしやすめ

ガッツリ妄想するところ

QAA seiya.s

今思うと、一目惚れやったんかもしれへん

 

 

ひとりだけ楽しくなさそうなところとか、あきらかに無理やり連れられてきました、みたいなオーラで座ってるとことか(笑)

 

話してみたら意外と声が低かったり、冗談を言うのが好きやったり、

 

なんかめっちゃ気になった。

 

 

あの日もバイトの帰り、古謝が貸してくれた傘をさして駅からの道を歩いてたら、ほぼ毎日通り過ぎてる本屋から*ちゃん出てくるなんて、予想外すぎへん?

 

最寄り駅も同じで、帰り道も途中まで同じ。

この日雨が降っててよかった。古謝が傘貸してくれてよかった。

 

でも*ちゃんと仲良くなればなるほど、好きになればなるほど、

 

 

 

あの日キスしたこと、謝らなあかんなって。

 

 

 

どう考えても軽率すぎる行動やし、*ちゃんに嫌な思いさせた

 

わかってんねんけど、あの夏の日のことを話したら、謝ったら、もう今までみたいに一緒におれへん気がして。

 

なかなか口に出せへかった。

 

*ちゃんのこと好きやし一緒におれるだけで嬉しいけど、それだけがずっと引っかかってどうしようもなかった。

 

 

それから月日が経って、

 

二次会を*ちゃん連れて抜け出したあの日。

 

*ちゃんの口から出た、夏、というワードに空気が少し、変わった気がした。

 

ほらやっぱり*ちゃんも、わかってるんや。

俺が悪いだけやのに、な。

 

そう思ったら、ちょうど目の前を電車が通過するとき

 

「キスしてごめんな」

 

そう、言えた。

 

 

聞こえてないかもって思ったけど「気にしてないよ」って*ちゃんの声が返ってきた。

 

それからまたいつも通り、ふたりで帰る夜道。

会話が途切れ途切れになるのはたぶん、俺のせい。

 

こうなるって分かってたけど、やけど*ちゃんがこっち見てくれへんのは、思った以上に辛かった。

 

自業自得やねんけどさあ。

 

 

もう会えへんかもって思った。てか俺と会いたくないよな。

 

 

 

そう思ってたのに、

 

ある日の夜、バイトが終わり帰る支度をしているとき、iPhoneから着信が

 

画面に表示されてる名前は

 

「*ちゃん、?」

 

相手は、あれからまったく会っていなかった、*ちゃんからだった。

 

 

画面をタップしてから、「うわ、出るの早すぎて引かれたかも」とか思ったけど、この時はそんなこと考える余裕もなくて

 

「もしもし、」

「…あ、誠也くん?」

「うん、どうしたん?」

「今なにしてるの?」

 

唐突すぎて驚いた。もう日付けが変わろうとしてる時間、しかも*ちゃんからこんな電話。

 

「バイト終わって今から帰るとこやで」

 

そう伝えたら、そっかぁ、と一言。え、ほんまなんやろ?

 

「どうしたん?なんかあった?」

 

そう聞くと、予想もしてなかった言葉がiPhoneから響いた。

 

 

 

「会いたくて、誠也くんに」

 

 

 

え、え?今、なんて言った?え?

 

「え?」

「って思ったけど、無理だよね、ごめんね急に」

「*ちゃん今どこ?」

「〇〇駅の改札でたとこだよ」

「わかった、すぐ行くで待っててくれへん?できるだけ危なくないとこ、ってなんやろ、えっと、」

「あはは、大丈夫だよ、待ってるね」

 

*ちゃんに笑われてから、めちゃくちゃ必死になってることに気付いた。

 

エプロンも、紐だけほどいた中途半端なまま。

 

余裕なさすぎへん?

 

 

でもとにかく今は早く、*ちゃんのもとへ。

 

 

 

 

飛び乗った電車を降りて、急いで改札に向かうと、ベンチに座っている*ちゃんがこっちを見た。

 

「誠也くん」

 

ふわっと笑った顔がまったく変わってなくて安心した。

 

「ごめん、待たせて」

「全然大丈夫だよ、こっちこそごめんね、急に」

「俺も会いたかったから、大丈夫やで」

「よかったぁ」

 

…なんか*ちゃんがいつもとちがう?

 

「*ちゃんこんな時間まで何してたん?」

「バイトのね、飲み会だったの」

 

 

*ちゃん、酔ってるんや。

 

やからこんなふわふわしてるんか。

 

「*ちゃんだいぶ酔ってる?」

「…バレた?」

 

にやっと笑う*ちゃんが可愛くて。

 

 

「俺んちくる?」

 

 

なんて口走ってしまっていた。

 

「いいの?」

 

え、そんな反応返ってくる?

 

「ええけど、*ちゃんは大丈夫なん?」

「大丈夫ー、やったあ、誠也くんち行きたい」

 

酔ってる女の子を家に入れるとか俺めっちゃ悪いことしてへん?まとくんやん(まとくんごめん)

 

これからどうしようかまったく考えてないけど、*ちゃんと一緒におれるならええか、なんて思った。

 

 

 

アパートについて、さっそく*ちゃんに水をあげた。

 

「もう酔い冷めたよー」なんて笑うけど、顔赤くしてそんな柔らかい表情で言われてもなんの説得力もないで?

 

 

それから少し他愛もない話をして、水を少しずつ飲みながら*ちゃんは、ゆっくりと、話し始めた。

 

「……なんであの日、キスしたの?」

 

*ちゃんはずっと下を向いてるから、目は、合わない。

 

 

「……一目惚れしたからって言ったらどうする?」

「誠也くんがめずらしくおもしろいこと言ったなあって思う」

「いや冗談ちゃうねんけど、」

「じゃあなんで、謝ってきたの?」

 

それは、少し食い気味に、少し、震えた声で。

 

「え、」

「…好きな人にキスされて、謝られることがどれだけ悲しいかよく分かったの」

「…*ちゃん、」

「……誠也くんのことが、好きなだけだよ」

 

そのとき初めて、泣きそうな顔で笑う*ちゃんと目が合った。

 

 

ていうか今言ったこと、それって、

 

 

「……ごめん誠也くん、眠くなってきた、かも」

「え?」

 

そう呟いた*ちゃんは、机に突っ伏してしまった。

 

「*ちゃん…?」

 

え、ほんまに寝た?

 

*ちゃんが言ったこととか今目の前で寝てることとか、情報が多すぎて頭が追いつかない。

 

ただ分かっていることは

 

 

さっきから顔のニヤけが止まらないってこと。

 

…*ちゃん寝てくれてよかったかも

 

 

 

「……起きへんともっかいキスすんで」

 

 

 

 

目が覚めたらなんて言おうか。