はしやすめ

ガッツリ妄想するところ

いますぐきすみー! seiya.s

それは生徒会の後輩の手伝いで帰りが遅くなった日のことやった。

 

時間的にも結構暗くなってて、電車降りた時にはほぼ夜みたいなもんで。

 

普段から人通りの少ないこの道もちょっと不気味に見える。

 

そこで出会ったわけ。あの子と。

 

え、絶対あれって……って思ったときには「彼女嫌がってますけど」って前に立っとった。そんな感じでかっこつけてたけど実は普通に怖かったからそっからの記憶はほとんど無い。(我ながら情けない)まぁでも、とりあえず助けられたからよかった。

 

彼女の手を引いてなんとか逃げて、住宅街まで出てきたとき、「あ、ありがとうございます……」って涙目で必死にお礼言うてくれたなあ。街頭に照らされた彼女の制服を見て、〇高ってことだけ分かった。そういやまとくんが〇高は可愛い子多いって言うとったっけな。

 

「あそこ人通り少ないし怖いですよね、気をつけてください」

「はい、すみません、」

「いや怒ってるわけじゃなくて、」

「はい………」

 

あかん、なんか俺が泣かせたみたいになってる。

 

「家、このへん?」

「は、はい、あと10分くらいで、」

「送るわ」

 

高校生なんやったら年下かタメや。敬語外してもええやろ。

 

「んーどっち?右?左?」って彼女見たら、「いいです!ほんまにすぐそこなんで!」って顔の前で手をブンブン横に振ってる。

 

「またさっきみたいな目にあってええの?」

「それは……」

「な、今はひとりで帰るん怖いやろ?俺も心配やし送らせて」

「……ありがとうございます」

 

それからは高校の話とか、いろいろ、ほんまいろいろ話した。どうやら彼女は2年らしい。年下やった。あと、笑顔が可愛い子やなあって思った。

 

それから、無事に家に送り届けられた。

 

「じゃあ、また、」

「……また!?」

「え、だって最寄り同じなら会うかもしれへんし」

「……そ、そっか、そうですよね、、はは、じゃあまた……!」

 

やっぱ女の子は泣き顔より笑っとる方がええなあ。アイツも笑っとる方が絶対ええし。

 

あーなんかええことした気分。明日リチャに話そや。

 

 

 

それから数日たって、学校帰り、最寄りの駅に着いたとき、「……あの!」って後ろから声がした。

 

「…あー、えっと○○ちゃん」

「……こ、こんにちは!」

 

あのときの子や。

 

暗いとこでしか見たことなかったからわからんだけど、めっちゃ肌白いな。え、変態か俺。じゃなくて、

 

「あれから変な人らに捕まってない?」

「あ、大丈夫です…!」

「そっか、ならよかった」

「ありがとうございます、」

「うん、で、えっとー、どうしたん?」

 

あきらかになんか言いたげやったから聞いてみた。そしたら予想外のこと言われてびっくりしたん今でも覚えてる。

 

「あのときの、お礼で、」

 

って差し出されたのは可愛くラッピングされたちっちゃい箱で。

 

「よ、よかったら、食べてください!あ、全然そんな毒とかじゃないんで!けど味の保証はあんまり、ていうか甘い物苦手ですか!?」

 

正直おどおどしたイメージやったけど、こんないっぱい話すんやって思ったら笑えてきて

 

「ふ、」

「えっ、ど、どうしたんですか!?」

「や、めっちゃ話すやんと思って」

「へ、?」

「わざわざありがとうな、めっちゃ嬉しい」

 

そう言って受け取ったら、彼女は嬉しそうにふわって笑った。

 

それからかなあ、よく帰りに会うようになったのは。「誠也くん…!」って遠慮がちに声掛けてくれて、素直に可愛いなって思った。

 

「実は、朝の電車とかもたまに一緒で、誠也くんのこと知ってました」って恥ずかしそうに言われたり、「あの、よく誠也くんと一緒におった女の人って彼女さん、ですか…?」って聞かれたり、え、誰?アイツのこと?ただの友達やでって返したら、安心したように「そうですか」って笑った。

 

うん、可愛いな、普通に可愛い。

 

やから、「誠也くんのこと好きです」って言われたときは嬉しかったし、恋愛ってこんなもんやんなって。現国の桐山せんせーも「高校生んときはもういっぱい彼女つくれ」って言うとったし。(桐山せんせーがあてになるかはわからんけど)

 

あーけどこれアイツが知ったら、また「そういうとこほんまチャラい」って言うてきそうやなあ。とりあえずリチャに話そかな。

 

 

 

 

 

それからこのことで、どこかの誰かが泣いて悲しんでたことに気付いたのは、もう少しあとの話。